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『星空からのメッセージ展 大宮エリー』へ行った

 以前、渋谷PARCO MUSEUMで開催された「生きるということ」展を観たときは、言葉を使った表現としての新しさや可能性に軽く衝撃を受けたような感覚だった。あれから、夏にはギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催されていた大宮エリー展に行ったり、絵本DVD『亀の恩返し』を観たりして(しかもサインまでもらってしまった)、表現者として、今とても気になる存在になっているのが大宮エリーさんである。


 「歩く・感じるプラネタリウム」をコンセプトに掲げた体験型展覧会である今回の企画は、形式としては「生きるということ」展などに似ていて、アトラクションのような作り込まれた空間を歩き、そこかしこに書かれた言葉、散文に触れていくというもの。


 視覚的な美しさというのもあるけど、「生きているということ」展のとき以上に、文章の内容に注意が向いたような気がする。
 そこにある言葉は少なくとも「詩」ではなくて、どちらかと言えば「コピー」に近いと思う。正直なところ、ストレートではあるけれど、言葉の並べ方の作為的な部分にあざとさを感じてしまったり、並べることでもっと、「意味」以上の「運動性」みたいなものを引き出せるんじゃないかという印象を持った。分かりやすく伝わってくる一方で、言葉の可能性が制限されてしまっているような、ちょっと大声では言いにくいような感覚。
 というようなことはそもそも普段からなんとなく考えていたりしたのだけど、今回の展示を最後まで見ると、またその次の発想も生まれてきた。展示の終盤に、映像として次々に言葉が映し出される部分があって、それは現代というキビしい時代を生きる人たちへの応援のような、癒しのような内容だった。シンプルな言葉だったのだけど、ちょっと感動した。多分、高校生くらいの頃のいちばんヤバイ時期の自分だったらすごい感動して、救われたような感覚を抱いたかもしれないな、と思ったのだ。要するに、現在、こういうものが必要とされている、求められている側面はかなり高い確率で「ある」と言い切れるんだろうな、ということ。だけど単純に、こうした図式のもとにばかり言葉を当てはめていきたくのはどうなんだろうなぁ……という、しょうもないことを考えていた。考えさせられた。


 本当に様々な形で「言葉」を使った表現を実行に移していく人だ。文学とは全く異なるスピード感を持っていて焦るけど、そのマルチさや広がっていく力、巻き込んでいく力には刺激されるし、励まされる。


『星空からのメッセージ展 大宮エリー』
会場:コニカミノルタプラザ ギャラリーB&C
期間:2013/09/11(水) -2013/09/30(月)
http://www.konicaminolta.jp/plaza/schedule/2013september/starlitsky/index.html


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「大宮エリー『生きているということ』展」へ行った

 展覧会について記事を書くというのは想定していなかったのだけど、今回の展示を観ていたら、書き残しておきたいことがあったので。


 大宮エリーというと、映画『海でのはなし』のイメージしかなかったので、今回の展示には驚かされっぱなしだった。
 1から順番に(たしか39まで)、壁に書かれていたり映像として映し出されたり、様々な形で表現される詩のような散文を読んでいくという構成で、「生きていく」ということに対して限界までシリアスに誠実に向かい合うことで紡ぎ出された言葉たちがそこにある。


 具体的にこの言葉が良かったとか、そういうことまで細かに記憶しているわけではないし、そもそもここに書いてはダメだと思うけれど、そもそも一点が心に残るというようなものではなくて、全体的な雰囲気というか、態度、考え方みたいなものが心地よくて、これがたとえば「死にたい」と思っている誰かの精神的な支え、あるいは救いになることもあるのではないか、という気になった。


 大宮エリーさんはもともとは会社員で、そこから独立して今の脚本家とか物書き的な仕事をするようになった人だけど、そういう「言葉」を扱う人の展示として希望が持てた。『ミッドナイト・イン・パリ』の記事で、「書く」ことの表現行為としての不自由さというか、「本当に響いていけるのか?」という点について触れたけど、この展示は物書き=ライターの新しい表現の可能性を切り開いているように思う。


 この展示を観た足でそのまま、映画『きいろいゾウ』を観たのだけど、その中の登場人物が、ある小説が印字された紙、そしてその字そのものを手で撫でるシーンがあって、あらためて「活字」とその効用、意義、可能性についてのことが脳裏にぼんやり浮かんだ。今回の展示は「活字」がかなりの強度を持って何かを発していて、このブログにそのことを書いておきたいと思った。


「大宮エリー『生きているということ』展」
会場:PARCO MUSEUM パルコミュージアム 渋谷パルコ パート1 / 3F
期間:2013/01/25 (金) -2013/02/18 (月)
http://www.parco-art.com/web/museum/exhibition.php?id=531



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プロフィール

彩灯 甫

Author:彩灯 甫
沖田灯の筆名で2012年から活動しましたが、2017年8月22日に生まれ変わりました。ブログタイトルも『新しい言葉を尽くしてるって思いたい』から新しくしました。

小説家・脚本家を志して書いています/映画・音楽批評/早稲田エクステンションセンター根本昌夫クラス/映画美学校脚本コース/岡村詩野音楽ライター講座/ことばの映画館/シネマキャンプ/音小屋

学生時代は早稲田大学児童文学研究会、CINEMAX SIDEVARGに所属/writers' light

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